読んでいただきたい!今月のお勧めの本!「夕映え天使」
「夕映え天使」 浅田 次郎 著
6篇を収集した短編小説。
50ページ弱の物語1つ1つがそっと心に沁み込んでくるような不思議な感覚を味わう。
寂しいとか、一言では表現できない「夕映え天使」というタイトルが秀逸で素敵すぎて最初からぐっと心に響きます。
下町の食堂の父子のもとにふらりと舞い降りた天使のように彼らに安らぎと希望を与えた後、理由も言わず去っていった身寄りのない女性の死。
彼女の遺体を確認に行った主人公は、所轄の交番で自分と同じような目にあった男に遭遇する。
ほろ苦く、切なく、それでいて深く語りすぎないところがしみじみとした余韻を残す表題作です。
定年を目前にした刑事と、同じく時効を目前にした殺人犯が鄙びた田舎町の珈琲ショップで出会う「琥珀」もなかなか味のある作品でした。
作者の優しくあたたかい眼差しが人生の裏街道をたどる登場人物たちに注がれています。
もうすぐ定年を迎えられる方、すでに定年を迎えられた方、これからの第2の人生を迎えるにあたって、この心温まる小説を読んでいただき更に素晴らしい人生を歩んでいっていただけたらと思います。