読んでいただきたい!今月のお勧めの本!「光と影のTSMC誘致」
「光と影のTSMC誘致」 深田 萌絵 編著
日本の大手メディアは、日本は人件費が高いために競争力を失ったと吹聴しているが、TSMCという企業がどのようにして高い利益率を維持してきたか、その実態を語る人間は少ない。
半導体製造工場は大量の有害物質、有毒物質、発がん性物質や重金属が気体、液体、個体の形態で排出される。それらの物質を無害化するのに、気体や液体は種類ごとにフィルターや除害設備を必要とし、個体は産廃処分費がかかり、その環境対策費用がかなり重たいのである。
日本やアメリカは環境を守るために利益を犠牲にし、台湾の半導体製造業をはじめとする企業は利益を優先した。そのため、台湾は河川の約25%、農地の約5%を重度の汚染で失った。人工透析率は人口比で世界首位、肺がん率は北朝鮮に次いでアジア第2位である。
中国のTSMC工場の周辺住民すら、TSMC建設反対運動を行うくらい酷い有り様だ。そして、その杜撰な管理体制から、TSMCアリゾナ工場では建設中に2名の死者を出した。ただし、そのような実態を台湾メディアが報じても、日本ではほとんど報じられることはない。それは、日本が報道の自由ランキングで世界68位(2023年)、G7で最低だと評されるのと関係があるのかもしれない。
本書は、外資であるTSMCの誘致についての疑惑、彼らが台湾で起こした環境問題、そして熊本の環境規制対応の杜撰さ、現行の環境関連法が完全ではないということに警鐘を鳴らす。
最後に、水俣病を経験した熊本が今後の熊本の環境や市民の健康を守るために何ができるのかということについて提案する。
誰も書きたがらないなら、自分で書こうと筆を執ろうとしたところ、環境問題について意識の高い方々が執筆陣に加わってくださった。
上記は著者本人のコメントです。
私もこの本を読んでみて、現在日本国、熊本県は半導体企業誘致という経済ばかりに目が向き環境問題(地下水・河川・海・有機化合物・交通状況・住民の健康状態など)を後回しにしているような気がしてならないと思わされた本でした。
今だったらまだ間に合うと思うので、地域住民・県知事・市長・議員の方々がもっともっと環境問題に声を上げて頂き、以前熊本県で発生した「水俣病」などの環境問題を二度と引き起こさないよう願うばかりです。